皮膚筋炎・多発性筋炎 Q&A
難病情報センターホームページ よくある質問と回答
難病情報センターの多発性筋炎・皮膚筋炎のホームページ改訂にあたり、東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科の上阪先生より、私たち患者がどんなことを知りたいのかまとめるようご依頼があり、会員の皆様からアンケートの形でご意見をいただき、上阪先生に提出いたしました。上坂先生から以下のような連絡を頂きました。難病情報センターのホームページで見ることができますが、ペンタスの会ホームページにも紹介いたします。
難病情報センターホームページ改訂に際し、「患者さんの疑問」を集めていただいてありがとうございました。頂いたご質問のなかから、ホームページ掲載すべき一般的質問を選ばせていただき、回答と共に難病センターに送りました。
東京医科歯科大学 上阪 等
Q 典型的な治療開始後の経過はどのようなものですか。
A 高用量ステロイドが有効であれば、1-2週間でCK値が下がり始めます。ひと月後位には筋力の回復も認められます。3-4週のステロイド治療の結果、ステロイド薬単独での治療が困難と判断したら、免疫抑制薬を併用します。ステロイドの副作用が出るとすれば、開始後1週間位経って、不眠や多幸感・抑うつ感などの精神変調や空腹感などの症状が現れます。その後、ステロイド糖尿病、脂質異常症などが現れることがあります。ひと月も経つと、免疫力低下による感染症、満月様顔貌、ステロイド筋症なども現れてくることがあります。免疫抑制薬併用にもかかわらず、2ヶ月以上CK高値が続くのは治療反応性の悪い筋炎です。治療が奏功しても、約半数の方しか筋力低下の完全回復が達成できないようです。また、皮膚症状はステロイド減量とともに再現することも多く、このような場合には軟膏などで対処するのが一般的です。
Q CK値が正常範囲になっても筋力が回復しません。なぜでしょうか。
A CK値が正常でも、アルドラーゼなど他の検査値が異常の患者さんもいらっしゃいます。その場合、筋炎は落ち着いていないと考えられます。中等用量(プレドニゾロン換算で体重1kg当たりおよそ0.5mg以上)のステロイドを長期服用している患者さんでは、ステロイド筋症による可能性があります。
しかし、MRIを含む検査データが正常で、ステロイドも5mg/日以下にもかかわらず、筋力が回復しきらない患者さんが多いのも事実です。現在は、リハビリによる筋力トレーニングしか対策がありませんが、研究の進展でこの問題も対処されなくてはなりません。
Q この病気は癌になりやすいと聞きました。発病時には癌の検査をしましたが、退院後はどうしたらいいでしょうか。
A 発病後も2年間は癌などの悪性腫瘍が見つかりやすいと言われています。一方で、起きやすい癌の種類は一般の方々と変わりません。したがって、主治医と相談しながら、一般的な癌検診をきちんと受けるように努めましょう。
Q ステロイドが減らせません。どのような対策があるでしょうか。
A ステロイドは長期間使用すると、さまざまな副作用があります。ステロイド減量を助けるのが免疫抑制薬です。現在、アザチオプリンとシクロフォスファミドが保険適用になっています。保険適用外の薬剤では、メトトレキサートやタクロリムス、シクロスポリンAが使われています。これらの薬を併用することで、ステロイドを減らすことが出来る場合が多くあります。患者さんにもよりますが、最終的にはステロイドを中止して、免疫抑制薬のみにすることも可能です。
稀に、中等用量(プレドニゾロン換算で体重1kg当たりおよそ0.5mg)以上を朝一回で服用している患者さんがいらっしゃいます。この場合、1日3回にほぼ均等に分けるだけでも効果が良く出て、減量が可能になることがあります。
Q ステロイド少量でも大腿骨頭壊死はおきますか。
A 大腿骨頭壊死は、ステロイド高用量の際の副作用です。しかし、骨頭が壊死した時は症状がなく、その後の減量後に骨頭が潰れ、初めて症状が出ることもあります。他の副作用も含め、その予防には、ステロイドは必要量を最低限使うことが必要で、専門医の判断が重要です。
Q 妊娠・出産・手術はできますか。
A ステロイド維持量で病気の活動性がおちついていて、他に問題となるような合併症がなければ可能です。妊娠に関して免疫抑制薬は比較的安全なものから危険なものまでありますので、受持医とご相談下さい。
手術は、癌手術の場合、病気の活動性が落ち着きかけたら、ステロイド維持量まで減量する前に行うことがあります。癌治療優先だからです。小さな手術や抜歯などで、待てる場合は、手術後感染症の危険を減らすために、維持量になってからが望ましいです。
Q 食事や日光、風邪予防などへの注意はありますか。
A 食事は、バランス良くとることを心がけます。ただしステロイド服用中は副作用で食欲増進することがありますので、食べ過ぎにも注意します。
日光、特に紫外線は皮膚症状を悪化させる原因となります。生活に支障のない範囲で遮光に心がけましょう。風邪などの感染症は、間質性肺炎を悪化させる原因にもなります。インフルエンザ予防接種なども積極的に受けて下さい。
Q 温泉、プール、マッサージ、針灸は良いですか。
A 一般的には、問題ありません。
Q 筋症状のない皮膚筋炎で、間質性肺炎を合併して治療を受けています。特定疾患に認められないと聞きましたが本当でしょうか。
A 現在の認定基準を厳格にあてはめられてしまうと認定されません。しかし、我が国からも参加している国際的診断基準策定を機会に、これを改訂する努力がなされています。